| ホトケドジョウ類(コイ目タニノボリ科フクドジョウ亜科Lefua属)には,ホトケドジョウ(L. echigonia),ナガレホトケドジョウ(L. sp.),エゾホトケドジョウ(L. nikkonis),ヒメドジョウ(L. costata)の4種が含まれる.このうち日本に生息する3種は絶滅危惧種に指定されている.本研究ではホトケドジョウ類の遺伝的な類縁関係を調べ,それらの進化の過程を明らかにするとともに,ホトケドジョウ類の保護のために遺伝学的な基礎データを得ることを目的とした.ミトコンドリアの調節領域の塩基配列を決定し,系統解析を行ったところ,ホトケドジョウ類4種は一つの例外を除いて各々単系統群を形成した.ナガレホトケドジョウとホトケドジョウは遺伝的多様性が大きく,前者は3つの種内集団(紀伊-四国集団、山陽集団、東海集団)に,後者は6つの種内集団(北陸集団、東北集団、近畿集団、東海集団、北関東集団、南関東集団)に分けられ,各々が保全単位となりうることを示した.ナガレホトケドジョウの東海集団は,形態学的にも生態学的にも明らかにナガレホトケドジョウと同定されるにもかかわらず,むしろホトケドジョウにより近縁であった.核のDNAのRAPD分析を行ったところ,ナガレホトケドジョウ東海集団のパターンは,ナガレホトケドジョウの他の2集団やホトケドジョウの6集団のパターンと明瞭に異なった.このことから,ナガレホトケドジョウの東海集団は,ホトケドジョウとナガレホトケドジョウの交配によって形成された雑種集団を起源とするのではないかという仮説をたてた.東海地方のナガレホトケドジョウは独特な集団であり,保全単位として重視する必要があると考えられる. |