| "本研究では,河道周囲の止水域による魚類への生態的機能を明らかにすることを目的とした.そのため本研究では水理計算によって河川本流との接続頻度を明らかにした河川周囲の止水域(ワンド1 - 4)と本川について,魚類の採捕などの調査を行った.採捕魚類の内,ドジョウ科魚類,フナ属魚類,オイカワについて標準体長の測定に加えて,炭素と窒素の安定同位体比を分析した.炭素安定同位体比の測定結果に対して統計的な有意差を検定するために判別分析を行った.移動能力の低い底生魚であるドジョウ科魚類の炭素安定同位体比はワンド1とワンド2の間で,ワンド2とワンド3の間においても有意に分けることができ,その生息場における有機物の循環系の違いを反映していたと考えられた.ワンド1とワンド2は平水位では孤立した水域であること,水理計算結果からワンド2は調査を行った期間で2回接続したことが明らかになっていることから,河道周囲の止水域と本川などの水域の接続頻度を反映するトレーサーとして用いることができることが証明された.このような水域の接続性に関する情報は,水生生物が属する有機物の循環系として生息場を特定することに加え,水位変化が激しく水域が変化する河川においては水生生物による水域の利用行動を明らかにすることを可能にする.本研究では産卵行動が出水に依存することが知られていたフナ属魚類について取り上げた.その結果,河川周囲の止水域で生育していたフナ属魚類の稚魚が本川に向かって移動していたことが確認され,河川周囲の止水域が河川本流に生息するフナ属魚類の再生産と多様性に重要な役割を果たしていることが証明された.さらに出水前後の止水域におけるオイカワを比較した結果,出水後には炭素安定同位体比の大きく異なる本川の値と一致する個体が止水域で採捕された.これは本川に生息していたオイカワが出水後に止水域に移動していたことを示し,止水域が本川に生息する魚類にとって出水時における避難場として利用されていたことが示唆された." |