| "フィルダムを対象に行われている安全管理のための測定の中で、最も重要とされるダム全体の状態を示す現象の計測には、堤体および基礎岩盤浅部からの浸透水量の計測と、外部変形量計測があげられる。一方で、管理ダム数が年々増加する中で、ダム管理費用の縮減を達成しなければならない現状において、安全管理のための計測の合理化が求められている。フィルダムの外部変形の測定は、堤体の天端およびのり面に適切な間隔の測線により格子を組み、各格子点に測量用の標的を設置し、水平および鉛直方向の変位量を測量することにより測定されている。計測頻度は、計測や結果の整理に要する時間が比較的長く、費用もかかるため、管理の第Ⅰ期である試験湛水時から週に1回、挙動安定後の最終段階である管理の第Ⅲ期には3か月に1回という計測頻度を採用している。そのため、地震後などの非常時における迅速な対応が課題となっている。迅速にかつ比較的安価に測量を行うシステムにGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)がある。GPSは、カーナビゲーションや測量作業でよく知られる人工衛星を用いた全天候型の測位システムである。近年、GPSによる測量に関しては、発信信号に乗せられていた人為的なノイズ(SA: Selective Availability 選択利用性)の解除、人工衛星の数の増加による24時間測量実施体制の確立、SN比(信号と雑音の比)の改善・アンテナ感度の増大といった電子機器の改善、GPSからの受信信号を瞬時に解析する演算機能の飛躍的な進歩、計測データの誤差処理技術の向上などにより、計測の精度が飛躍的に向上している。本論文では、以上のような状況に鑑み、既設の中央土質遮水壁型ロックフィルダムにおいて、光波測量および水準測量に基づく従来の外部変形計測と、GPSによる外部変形計測を行い、両者の比較を試み、その結果を踏まえて、GPSによるフィルダム外部変形計測の補完の可能性、さらには将来的に従来方法に取って代わるための具体的な課題について考察する。" |