| 近年、自然環境の保全および公共事業費の削減等の要請を背景に、既設ダムの効率的な利用が求められている。ダムの効率的利用を目的としたハード技術的な再開発事業としては、貯水容量を増やすための既設堤体の嵩上げ、貯水容量の有効利用を目的とした既設堤体における放流設備増設があげられる。既設ダムに放流管を増設する場合、設置する放流管より大きな開口部を設け、放流管設置後、既設ダム堤体には堤体自重および水圧荷重による応力が発生した状態で、放流管と開口部の空隙がコンクリートにより充填される。これは、ダムを運用しながら施工する関係上、水位が十分に下げられず、水圧荷重がかかっていることが多いためである。その際、新規にダムを建設する場合と同じような考え、つまり放流管径と同幅の空洞部があると仮定して求めた放流管周辺の引張応力を対象に、充填コンクリート内に配筋する補強鉄筋量の設計を行っている事例が多い。しかし、既設堤体と充填コンクリートの応力状態の違いから、既設ダムに放流管を増設する場合の放流管周辺発生応力は新設ダムのそれと比較して、引張応力発生箇所や発生応力値が大きく異なる。そこで、放流管を既設堤体へ増設する場合について、その施工手順を考慮した3次元有限要素解析による検討に基づいて増設放流管の空洞周辺の応力特性を把握することで補強鉄筋の効果を検討した。また、ここでは、現行設計での規定を上回る規模の大きさの地震荷重を想定したうえで、補強鉄筋量の合理的な検討方法の提案を試みている。 |