| 河口汽水域は、河川に代表される淡水環境と海洋に代表される塩水環境とが接する場所であり、動的かつ複雑な環境変化に応じて貝類が生息している場所である。貝類の生息という観点で環境を見た場合、主に底質と水質特性が生息する貝類の種類や量を直接的に強く規定する要素であると考えられる。 貝類の生息に影響する底質の粒径は直上の水流に影響を受けるため、流速の速い澪筋部や浅部では大きめの粒径分布を示す。また、水質について見ると縦断的には海側で、横断的には深部で、塩分濃度が高くなるし、富栄養化した水域では深部で溶存酸素が低くなる。 貝類の生息を直接的に強く規定すると思われる底質と水質の分布に影響し、これらを形成するのは、地形、河川流量や潮汐といった物理的特性であるので、河口部における貝類の生息環境の概要を決めるのは河口地形、河川流量や潮汐ということになる。 ここでは、愛知県東部を流れる一級河川豊川の河口域において、河川流量、潮汐といった物理的特性も考慮しつつ人為的改変を受けやすい河口地形が、貝類の生息にどのように影響しているのかについて、現地調査結果に基づき、議論する。 二枚貝の分布について見ると、塩分濃度に応じて海側からアサリ、ホトトギスガイ、ヤマトシジミが分布していた。アサリの分布について見ると、海に面した浅場において多く分布していた他、河道部にも分布が見られた。河道都でアサリが見られた地点では、粗砂より大きな粒径を持つ河床材料が重量割合で2割程度以上を占めており、流れが速いか水深が浅いなど撹乱がある程度存在する場所に分布すると考えられる。 ヤマトシジミについては、分布、存在量と河床材料特性との間には明確な関係は見られなかった。定常的に漁獲されており、むしろこの影響が大きいと考えられる。縦断分布を見ると塩分濃度との関連が強い様である。シジミは幼貝から成貝までが確認され、河口部において持続的に生息しているが、アサリについては幼貝しか確認されない。この理由は不明であるが、漁獲や、夏季に発生する底層の貧酸素化の影響が考えられる。 貧酸素水塊は、湾での内部生産や河川由来の有機物が深部で分解をうけることで発生すると考えられ、またこのような場所は底質環境も貝類の生息には適さない。豊川河口部には、改変による深部があるが、可能であればこのような場所は埋め戻すなどして環境修復を行うべきである。 河川水の流下流速が落ちる河口前面では、貝類の生息にとって特に浅場が重要と考えられる。 |