| 発展途上国における洪水被害は年々増加傾向にある1).それらの原因としては,近年の温暖化による気候変動に起因するもののほかに洪水調節施設の不足,水文観測所の整備・管理の問題,住民の洪水に関する基礎知識の不足などが指摘されている.中でも,大流域においては,降雨観測所を密に配置することが困難な場合もあり,降雨量推定の不確実性が洪水被害を拡大させる一因ともなっている.このような地域では地上観測網の拡充が望まれているものの,早急に対応するのは容易ではない.一方,近年では様々な地球観測衛星で観測されたデータを基に作成される高分解能の全球降水マップの開発が進んでいる.これら衛星降雨プロダクトが地上観測網の少ない地域での洪水対策に利用できれば,洪水被害の軽減が期待できる. さらには, 3B42RT(NASA) ,CMORPH(NOAA)を含む,多くの衛星降雨プロダクトはインターネットに接続するだけで入手できることから,降雨観測所の建設・維持費の抑制といったメリットもある.特に,GSMaP (Global Satellite Mapping of Precipitation)2)は,日本で開発された衛星降雨プロダクトであり,最新版となるGSMaP_MVK+3)はマイクロ波放射計データと赤外雲移動ベクトルを用いた高い時空間分解能(時間1時間,空間0.1度)が大きな特徴である.さらに一般公開が予定されているGSMaP_MVK_RT は,4時間という短いリードタイムで公開される利点を有しているため,降雨流出モデルを介した準リアルタイムでの洪水解析といった今後の利活用が期待されている.しかしながら,GSMaP_MVK+の精度について,瀬戸ら4)が日本全域での衛星降雨プロダクトとアメダス雨量計との精度検証を実施し,GSMaP_MVK+が過小評価であると示しており,その原因の一つとして固体降水層の物理特性の解明が十分でないことを挙げている.Hapuarachchiら5)は,日本国内およびアメリカの流域において,地上降雨量から算出した月平均雨量を基に衛星降雨量を補正を行い,単純な衛星降雨量のスケーリングのみでは適切な流出計算結果が得にくいことを述べている.このように,衛星降雨プロダクトの実際の洪水解析への応用に関して,更なるマイクロ波放射計のアルゴリズム改良や詳細な降水物理モデルの解明による降雨量プロダクトそのものの精度向上が求められている.一方で,途上国をはじめとして公開中の衛星降雨量の応用に関するニーズは高い.つまり,衛星降雨プロダクトの内部アルゴリズムの改良だけではなく,公開されるプロダクトの補正方法の開発も重要である.本研究では,現状で利用できる衛星降雨プロダクトの洪水対策への活用の実現可能性を明らかにすることを目的とする.そこで,衛星降雨プロダクトGSMaP_MVK+を対象に衛星降雨量と地上降雨量を比較することで両者の関係性を詳細に調べる.さらに雨域移動情報が衛星降雨プロダクトのみから得られる点に着目し,新たな衛星降雨量補正方法を提案するとともに適用性について評価する. |