| 河川における砂礫の減少は全国各地でみられ、粗礫化や基岩の露出等によって視覚的に顕著となっている。河川生物のハビタット(生息拠点となる場、産卵場など)は、砂礫堆が生み出す河床地形や河床間隙の特定の領域、特定の河床材料に結びついているため、砂礫が過度に減少すると様々な生物のハビタットが失われることが懸念される。しかしながら、砂礫の減少が河川生物へ与える影響はまだ漠然とした認識にとどまり、砂礫の減少により失われるハビタットや生物群集の変化の方向性を具体的に示す十分な知見は揃っていない。河川では1mm以下の砂から1m以上の巨礫まで様々な径の砂礫が同所的に存在し、礫径の構成が河床地形や河床空隙のあり方を大きく規定している。このため、河川生物に対する砂礫減少の影響を明らかにしていく上で、砂礫の量とともに礫径構成を考慮していくことは重要と考えられる。 栃木県を流れる鬼怒川上流の黒部ダム下流では、砂礫が減少し近年岩床が増えていると言われている。同時にダム下流では中礫(10-40cm、ダム上流で主材料の径)が少なく、小礫以下(<10cm)と巨礫(>50cm)以上が相対的に多い(小林ら2009)。これは、ダム下流において、小礫以下は満砂状態のダムを通過し供給があり、巨礫は未だ流出せずに残存しているのに対して、ダム直上で停滞しやすい中礫は供給より流出が大きく卓越しているためと考えられる。著者らは黒部ダム上下流において、底生動物群集や瀬淵構造について河床礫径との関係を1テーマに研究を行ってきた。その研究を通じて、山地河川の河川生態系、特に底生動物の量的な多さを考える上で、中礫がたいへん重要な役割を果たしているとの認識に至ったので、そのことを本報で示す。 |