国立研究開発法人土木研究所

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発表 河川-農業水路ネットワークにおける両側回遊型甲殻類の個体群存続可能性評価手法の開発

作成年度 2010 年度
論文名 河川-農業水路ネットワークにおける両側回遊型甲殻類の個体群存続可能性評価手法の開発
論文名(和訳)
論文副題
発表会 2010年 河川技術に関するシンポジウム
誌名 社団法人土木学会 土木学会誌
巻・号・回 16
発表年月日 2010/06/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム中田和義
河川生態チーム傳田正利
河川生態チーム三輪準二
河川生態チーム天野邦彦
浜野龍夫
抄録
農業水路を生息場として利用する生物の保全では、河川-農業水路間の生息空間連続性を確保し、水利用形態が異なる灌漑・非灌漑期にかかわらず良好な生息環境を維持する必要がある。こうした生物にとって農業水路は、社会条件の変化に起因する水資源変動の影響を特に受けやすい生息空間である。施策を通じて農業水路をより良好な生息空間として機能させる上では、農業水路ネットワークと生息空間の時間的変動性を考慮して対象種の個体群存続可能性を評価する手法を開発し、施策効果を評価・検証する必要がある。本研究の目的は、生活史の中で海域-河川-農業水路間を移動する両側回遊種ミゾレヌマエビ(以下、エビ)を生息空間連続性評価の指標とし、個体群存続可能性評価手法を開発することとした。 灌漑期と非灌漑期にそれぞれ、愛知県豊川流域の7ヵ所の圃場整備済み農業水路を対象に、エビの遡上に影響する水路の物理環境特性とエビの遡上個体数との関係を明らかにするための野外調査を実施した。また、現地調査結果と既往知見に基づき、調査地における農業用水の利用形態とエビの生態(水路選択、生活史、成長、繁殖等)について時間的変動性を考慮してモデル化し、豊川支川古川と農業水路から形成される生息空間ネットワークにおけるエビの個体群存続可能性評価モデルを作成した。そして、各水路におけるエビの生息分布(相対個体数)を計算し、現地調査の結果と比較し本手法の信頼性を検討した。 野外調査の結果、エビの捕獲数は水路間で著しく異なり、エビは湧水水路へ選好的に遡上した。水田排水が消失する非灌漑期には非湧水水路の多くが水涸れし、エビの死亡個体が多数見られた。本研究による評価モデルから算出された各水路におけるエビの相対個体数は、野外調査による実測値を良好に再現した。 今回開発したモデルを利用することで、例えば農業生産基盤整備等の施策が農業水路におけるエビの個体群存続可能性に及ぼす影響やその改善策の検討が可能となる。また、優先して保全・修復すべき水路の構造特性や生物に配慮した農業用水の利用形態等を検討できるとともに、気候・社会条件変動の影響による農業用水の需給バランスの変化に対応するために講じる施策がエビの個体群存続可能性に与える影響を評価することも可能となる。本手法は農業水路に生息する他の生物個体群の保全に展開することも可能と考えられる。
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