| 流域内に貯留されている水の総量とその形態は、流域の人為撹乱や気候変動に対する水循環のぜい弱性を明らかにする基礎的資料となり得る。例えば、地下水として大量の水を蓄えている流域と、薄い土層内に少しの水しか蓄えていない流域とでは、森林伐採や温暖化に対する水循環の応答特性が異なることが予想される。さらに、河川流量と流域貯水量との関係は、古くから多くの水文モデルが仮定してきた基礎的関係であり、こうした関係を水文観測情報から定量化することは、流域を分類するうえでも有益であると考える。 しかしながら、これまで、流域貯水量を定量化する試みや、さらにそれを流域分類の指標に用いる研究は、必ずしも十分に進んでこなかった。斜面スケールでは土壌水分量や地下水位の観測により、また大陸スケールではリモートセンシングの応用により、貯水量を推定する試みが近年進められている。しかし、本研究で対象とするような中流域スケール(~100km2)においては、貯水量を直接観測することが困難である。そこで、本研究では、カリフォルニアの森林流域において観測された降水・流量データを用いることにより、以下の二つの手法で貯水量を推定した。一つ目の手法は乾季から雨季にかけての水収支から総貯水量の変化を計算したものであり、もう一つはハイドログラフの逓減曲線と基底流量から貯水量の変化を推定したものである。いずれの指標も乾季から雨季にかけての貯水量変化を示した指標であるが、17の部分流域で求めたそれぞれの指標が流域の地形指標(斜面勾配と斜面長)と有意な関係があることを明らかにした。このようにして推定される流域貯水量と流域特性との関係は、環境変化に対する水循環応答特性を理解するのに有益な情報を提供するものと考える。 |