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論文投稿 高水敷を掘削した後に見られる河道内樹林の拡大速度

作成年度 2022 年度
論文名 高水敷を掘削した後に見られる河道内樹林の拡大速度
論文名(和訳)
論文副題
発表会 応用生態工学
誌名 応用生態工学
巻・号・回
発表年月日 2023/03/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
自然共生研究センター川尻啓太(KAWAJIRI Keita)
自然共生研究センター森照貴(MORI Terutaka)
公益財団法人リバーフロント研究所内藤太輔(NAITO Daisuke)
日本工営株式会社今村史子(IMAMURA Fumiko)
日本工営株式会社徳江義宏(TOKUE Yoshihiro)
流域生態チーム中村圭吾(NAKAMURA Keigo)
抄録
近年,河道内の樹木が定着範囲を拡大させる「樹林化」が日本全国で生じている.治水対策として,樹木の伐採に加え高水敷を掘削する対策が実施されているが,掘削後にヤナギ類等の樹木が再び繁茂する事例が報告されている.効率的な樹木管理を実施する上で,掘削後に再び樹林化することを考慮した管理計画が求められる.しかし,どの程度の速さで再び樹林が拡がるかについての知見は乏しい.本研究では,26箇所の掘削地を対象として,掘削後に撮影された衛星写真と空中写真から河道内における樹木の繁茂状況を判読した.そして得られた繁茂状況の年変化から,ヤナギ類を中心とした樹林の拡大速度と,河床勾配による違いについて検証した.その結果,樹林は掘削から約5年が経過すると拡大速度を増し,掘削から約10年が経過した頃には掘削した範囲の約50 %を覆うことが明らかとなった.掘削地には,ヤナギ類の種子が多量に運ばれるため,約5年が経過する頃には複数の個体が掘削地の一部を覆うほどに樹冠を大きくしたものと考えらえる.その後も,各個体での樹冠の拡大と個体の定着範囲の拡大が続いたことで樹林面積が増加したと考えられる.さらに,河床勾配に応じて,樹林化が進行する速度が異なっていた.河床勾配が緩い区間ではより速く樹林が拡大する傾向にあり,これは流速が小さく,樹木が流亡しにくくなったためと考えられる.また,勾配が緩いことで高水敷に堆積する土砂の粒径が小さく,湿潤環境が形成されやすいために,樹木が定着・生長しやすくなったと考えられた.本研究の成果は,高水敷掘削からの経過年数に応じた樹林の繁茂状況の推定に寄与する.これにより,掘削の後にいつ樹木管理を実施するべきかの判断材料となるだけでなく,樹林化の抑制手法の効果を評価することにも有用だろう.
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