【目的】 近年、ナノマテリアルが新たな環境影響物質として懸念されている。水溶性ナノマテリアルである水溶性フラーレン(C60(OH)n)は、主に化粧品や医薬品に含まれているが、使用されたC60(OH)n は下水道に流入し、共存する有機汚染物質と結合することで、放流先の水生生物に影響を及ぼす可能性が考えられる。本研究では、C60(OH)nとペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)が共存する場合のゼブラフィッシュ稚魚に及ぼす影響を検討した。
【実験方法】 試験水は、①DMSO(15mg/L)、②C60(OH)n (10mg/L)、③PFOS(5mg/L)、④PFOS(10mg/L)、⑤PFOS(5 mg/L)+C60(OH)n (10mg/L)、⑥PFOS(10mg/L)+C60(OH)n(10mg/L)の6 種を用いた。各試験水30 m/Lに卵(約30個、n=3)を入れ、26℃、明期16h/暗期8hで飼育した。試験水は3日目で一度換水した。孵化から4日目(暴露開始から7日目)の稚魚を採取し、生残率と奇形率を検討した。また試験魚のメタボローム解析を行った。
【結果と考察】 PFOSとC60(OH)nを同時に曝露した場合、PFOSを単独曝露した場合と比べ、ゼブラフィッシュに取り込まれるPFOSの量に差はみられなかったが、稚魚の奇形率(体長、背骨の湾曲角度、目の大きさ)の増加が確認された。またこれらの試験魚を用いてメタボローム解析を行った結果、PFOSとC60(OH)nを同時に曝露した場合は、PFOSを単独曝露した場合に比べ、プリン代謝に関与する代謝物の増加が確認された。これらの結果から、PFOS単独に比べ、PFOSとC60(OH)nが共存することでゼブラフィッシュへの影響が大きくなり、両者の複合影響が生じることが推察された |