本研究では、東北・北陸・北海道の33河川を対象に、河川下流域の物理環境と環境DNAにより得られる魚類の分布情報を用いて、回遊性魚類の分布域や生息場に影響を与える物理環境の要素を抽出した。さらに、河川汽水域における人為的インパクトの影響と分布の因果関係がわかりやすいモデル魚種として両側回遊型カジカを選定し、函館の3河川において、採捕調査と環境DNAによって該当種の分布情報を、また、ADCP等を利用して詳細な物理環境情報を取得した。これらの調査の結果、環境DNAにより検出された魚類相は周辺の水域環境をおおむね反映していることを示す結果が得られ、環境DNA調査が河川調査における環境評価に活用可能な調査手法であると示唆された。また、魚類の分布に影響を与える要素として、「砂州の発達」、「河口プールの有無」、「礫質の河床」、「河口の位置」、「埋立地」の要素が、両側回遊型魚類であるカジカ属の回遊に負の影響を与える汽水域の環境要素として「人工地形への開口」が、正の影響を与える要素として「河口砂州」、「自然河岸」が抽出された。さらに、カジカ属の稚魚の遡上適地は、「傾斜が中程度で、底層流速が小さい、岸際や瀬の還流部」であることが示唆された。 |