筆者ら1)は山岳トンネルの覆工の耐荷性能の評価手法の検討において,実大の覆工載荷実験とその再現解析
を実施した.再現解析モデルの物性値に,円柱供試体の一軸圧縮強度試験で得られた物性値を適用し解析を実
施すると,覆工載荷実験で得られた荷重変位曲線に対して傾きがやや大きくなることが確認されている.この
原因として,実験装置や境界条件の影響以外に,適用した物性値の取得条件と載荷実験条件に差があることも
考えられる.具体的には,圧縮強度試験はJIS A 1108 に基づき0.6±0.4N/mm²/sec の載荷速度で試験を行う,
即ち数分程度で一軸圧縮強度に到達する一方で,覆工載荷実験は約7 時間要し,載荷速度に換算すると約
0.001N/mm²/sec であり,載荷速度の違いが供試体の物性に一定の影響を及ぼしている可能性があると考えた.
一軸圧縮強度試験における載荷速度等の違いが物性に与える影響に関しては,載荷速度が低速であるほど
一軸圧縮強度が低下すること,軸方向粘性係数が増加すること,一定の応力強度比を超えると圧縮クリープひ
ずみが急増することが分かっている2)3)4).しかしながら,今回想定するような超低速条件下における傾向は明
らかでないことや,定量的に評価する手法は確立されていない.本報告では,覆工載荷実験1)と同条件にて円
柱供試体を作製し,載荷速度等をパラメータとした一軸圧縮強度試験を実施し,物性値に与える影響を検証す
るとともに,覆工載荷実験の再現解析に反映することで,構造全体系の解析結果に与える影響を確認した. |