近年,供用中の山岳トンネルにおいて,完成後長期の時間経過後に盤ぶくれ
が顕在化する事例が増加している.盤ぶくれは車両の安全な走行を阻害し,放
置することでトンネルの健全性や構造の安定性に悪影響を及ぼす恐れがあり
対策が求められる.既に盤ぶくれを含め顕著な変状が生じているトンネルに対
して補強対策を講じる必要があることは自明であるが,将来的な変状の発生が
懸念される区間に対してもインバートを順次設置していくことが重要であると考えられ
る.盤ぶくれに対する最も基本的な対策のひとつがインバートの新設または再設置(以
下,「インバート補強工」)であるが,供用中のインバート補強工には多くの課題が生じ
る.力学的な面での課題として,補強に伴う上半側での変状の発生が助長されるといっ
た知見のみならず,施工性の面では,狭い空間において路面掘削等の規模が大きい一連
の工事を行わなければならないことが挙げられる.経済性の面では,施工に伴う交通規
制の影響を最小限に抑える必要があり,社会的影響の大きさが挙げられる.そのため,施
工速度の向上が見込める等,合理的なインバート構造の検討を行う必要性が高まってい
ると考えられる.こうした背景を踏まえ本研究では,トンネル構造として成立性を担保
しつつ,施工の省力化を図ることを念頭に置いた新たなインバート形状を仮定し,盤ぶ
くれを模擬する模型実験を通して新形状の実現性を検討した. |