山岳トンネルにおける標準部の覆エコンクリートには,
設計厚30cm, 一軸圧縮強度18N/mm2の現場打ち無筋コ
ンクリート(以下,従来覆エ)が一般的に採用されてい
る.従来覆工は,各種の品質向上対策が行われているが,
目地部でのうき・はく離や漏水等の不具合発生は完全に
は防ぎきれていない.また,狭監な空間での打設作業が
生じることや脱型までに時間を要する等生産性を向上
させるには限度がある.それら課題を抜本的に解決するため,筆者らのグループは,新たな覆エ構造としてプレ
キャスト覆エ(以下, PCa覆エ)に着目して具体の構造
を開発中であり1.2)(国研)土木研究所との共同研究で
PCa覆工の現場適用に必要となる耐荷性能等の検証を進
めている.開発中のPCa覆工は,従来覆工よりも薄肉に
なる高強度の鉄筋コンクリート部材であり, 3分割型で
継手を2箇所有している.そのため,構造全体の耐荷力
や荷重作用時のひずみ分布,継手箇所付近の断面力など
の力学的特性が従来覆エと異なることが考えられた.
そこで,本研究では,開発中のPCa覆工について,実大規模の覆工載荷実験を行い,その結果と過去に実施し
た従来覆工の実験結果3)とを比較したまた,継手箇所
の変位や付近の鉄筋のひずみ,ボルトの軸力を計測し,
継手付近の挙動を確認した.なお,過去の発表4)では,
開発中の3分割型のPCa覆工は従来覆エと同等以上の構
造全体の耐荷力を有していることや最大荷重時のひずみ
分布が従来覆エと異なることを発表している.しかし,
破壊過程や継手付近の挙動等の詳細については言及でき
ていないため,本稿では継手付近の各種計測データを加
えて分析を進めている. |