主として岩盤中に建設される山岳トンネルは,地震により構造に大きな損傷を受けるのは非常に限定的な条件であり,地表の構造物と比較すると一般に地震に強いとされてきた.ただし,断層・破砕帯等の極端に地山の悪い箇所や不安定な斜面内,トンネル自体に既に変状が発生していた箇所,土被りの小さい坑口部等では比較的地震被害を受けやすいことが知られており例えば1)~3),経験的に覆工の補強等の対策が行われてきた例えば4).
一方,1995年の兵庫県南部地震5),2004年の新潟県中越地震6), 7),2016年の熊本地震8) においては,箇所は限られるものの,覆工の崩落を伴う比較的規模の大きな被害を受けた山岳トンネルがあった.このような覆工の崩落は利用者の被害に直結するが,発生が懸念される地山条件は十分に特定されていないとともに,仮に覆工が地震時に破壊しないよう耐震設計を試みるにしても合理的な想定荷重の考え方が確立されていないのが現状である.
本論文では,このような状況を踏まえ,地震の際に万が一覆工に断面破壊が生じたとしても,大規模な覆工コンクリートブロックの落下を抑制するフェイルセーフの観点を考慮した耐震対策の考え方について論じる.具体的には,覆工の自重による落下を抑制する方法として,覆工の単鉄筋補強の有用性について述べるものである. |