我が国の道路トンネルは、道路メンテナンス年
報1)によると、令和5年3月時点で約1.2万箇所存
在する。建設後50年を経過したトンネルの割合
は現在約25%であるが、今後増加する傾向にある。
また、約1.2万箇所のうち、都道府県や市区町村
といった地方公共団体が管理するトンネルは約
0.8万箇所と約7割を占めている。令和5年7月に
見直された国土強靱化基本計画2)では、インフラ
施設の老朽化が加速度的に進行している状況を踏
まえ、それらが正しく設計・施工・維持管理され、
定期的な点検・診断の結果に基づく老朽化対策を
講じていく必要があることや、多くのインフラを
管理している市区町村で土木系を含む技術系職員
数が減少するなど、メンテナンスに携わる担い手
不足が指摘されている。そこで、新技術や点検・
補修データの利活用などによるインフラメンテナ
ンスの効率化の必要性が言及されている。
これらの国土強靱化の推進方針にも対応し、国
立研究開発法人土木研究所(以下「土研」とい
う。)では、第5期中長期計画の研究開発プログ
ラムのトンネル分野で、診断支援システムの構築
を核としたトンネルの維持管理の高度化に関する
研究に取り組んでいる。その中で、特に外力に起
因する変状に着目し、点検・診断上の留意点の整
理を進めている。外力による変状の発生割合は材
質劣化や漏水に比較して低いが、その特徴として
多くの場合、進行性がある。そして、その変状の
兆候が見逃されてしまうことで、のちに通行止め
を伴う大規模な対策工が必要となるなど、トンネ
ルが致命的な状態へと至る事例が散見される。既
報3)では、本研究に関する土研での過去の取組み
概要及び今後の方針について報告した。本稿では、
その後の取組みの経過を報告する。 |