すべり面位置の特定や地すべり土塊の特性等の調査においては、ボーリングコアの観察や分析から得られる情報は重要な手がかりとなる。従来はすべり面粘土や破砕された地すべり土塊を乱さずにボーリングすることは難しかったが、近年の技術の進歩により、ほぼ乱すことなく地すべり土塊からでもボーリングコアを採取することが可能になってきている。従来のボーリングコアの観察方法は、主にコアの表面の目視観察によるものであるが、すべり面位置の特定や地すべり土塊の特性の把握の高度化のためには、コアを切断して研磨した断面を作って微細な構造を観察し、すべり面や地すべり土塊の構造や特徴を明らかにする必要がある。一方、X 線CT が地質系試料の内部構造を調査する手法として近年使用されつつある。地すべり分野においても、すべり面を含むボーリングコアを非破壊でその内部構造・立体構造を把握するための手法として応用できるものと期待される。本稿では、石川県南部の甚之助谷地すべりの中間尾根ブロック末端部において採取された高品質なボーリングコアを用いて切断研磨片を作成し、地すべり面近傍の変形構造を観察した結果、及びX 線CT によってすべり面や地すべり土塊の構造を把握するための適用性について報告する。なお、本研究は、土木研究所で実施している共同研究「すべり層のサンプリングと認定方法に関する研究」の一環として実施したものである。 |