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発表 日本の河川における底生動物現存量:全国データの整理から

作成年度 2011 年度
論文名 日本の河川における底生動物現存量:全国データの整理から
論文名(和訳)
論文副題
発表会 日本陸水学会第76大会
誌名 日本陸水学会講演要旨集
巻・号・回
発表年月日 2011/09/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム小林草平
河川生態チーム赤松史一
河川生態チーム中西 哲
河川生態チーム矢島良紀
河川生態チーム三輪準二、天野邦彦
抄録
 河川生態系の中での底生動物の役割を理解する上で、底生動物の多さ(生息密度、現存量等)は欠かせない情報であるが、一般に取りうる範囲や、何らかの判断基準となる多さはあまり認識されてはいない。底生動物現存量の統計量についての報告はみられるが、日本全国に様々な河川がありぞれぞれで上下流があることを踏まえると、底生動物の多さに関する情報は未だ不十分である。 国内では河川水辺の国勢調査(水国)が行われており、全国スケールの底生動物の空間パターンに関する貴重なデータが存在する。しかし、調査で得られた情報の整理は(特に定量調査と多さの情報)十分には行われていない。本発表では水国の定量調査データの整理にもとづき、全底生動物現存量に関する統計値、また空間分布パターン(河床勾配、底質、地方との関係)を示すことを目的とする。底生動物調査の3巡目(2001年~2006年)のデータを対象とした。水国では全国109水系を対象に、本川、支川、河口を含む各水系3-40の地点で(河床勾配が>1/100の上流は少ない)3回の調査が行われている。定量採集は膝程度までの水深で流速の速い場所で実施されている。採集はサーバネット(コドラート枠:25 cm四方、目合い:0.5 mm程度)により2ヶ所で行われ、底生動物全個体が抽出され全湿重量が測定される。汽水域を除く全724地点を解析の対象とした。各地点の物理情報として各地点の位置情報を基に地形図や河川整備計画の資料から河床勾配を決定した。また、調査時に記録される河床で優占する底質(泥、砂、細礫、中礫、粗礫、小石、中石、大石、岩盤)を確認した。全湿重量は採集面積で割り、面積あたり重量(全現存量:g m-2)を算出した。底生動物が多い冬春期(12~5月)と少ない夏秋期(6~11月)の2季に区分し地点間の比較を行った。全現存量は0~1356 g m-2の範囲であった。全地点を対象とした全現存量の統計値は、冬春期において25%値7.1 g m-2、中央値19.5 g m-2、75%値52.4 g m-2、夏秋期において25%値2.4 g m-2、中央値10.0 g m-2、75%値36.0 g m-2であった。これらの値はNew Zealandにおける同様の調査での結果と比べて数倍大きかった。 全現存量は河床勾配クラス1(<1/3200)から4(1/800~1/400)まで勾配が大きいクラスほど大きく、クラス4から7(>1/100)までは大きな違いはなかった。全現存量の中央値においてクラス4~7はクラス1・2 の7~13倍あった。また、全現存量は泥・砂で最低、砂から粗礫まで粗い底質ほど大きかった。全現存量の中央値において粗礫~中石は細礫の約2.5倍、泥・砂の8~14倍あった。下流よりも中・上流で現存量が大きいのは、底質の違いを反映している。粗い底質ほど安定性が高く、また空隙量が多く底生動物の生息量が高まると考えられる。 異なる河床勾配クラスを通して、全現存量は東日本の地方(北海道、東北、関東、北陸)に比べて西日本の地方(近畿、中国、四国、九州)で大きく、冬春期では西日本の地方は東日本の地方の4倍近くあった。北陸地方は中・上流の地点でも10 g m-2を下回る水系が特に多く、中部地方でも標高の高い山岳地帯を発する水系では全現存量は小さかった。こうした南北方向の地方による現存量の違いを生ずる原因として、体サイズの大きい一部の底生動物の西日本への分布の偏り、水温や河床安定性が可能性として考えられた。
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