イシガイ科二枚貝Unionidae は世界各地の河川や湖沼に生息している淡水の二枚貝である。国内では16種が報告されており、農業用水路を主な生息場所としている。農業漁水路は、イシガイ科二枚貝をはじめとした水生生物にとって重要なハビタットであり、生物多様性保全の機能があるといわれている。しかし、近年の圃場整備事業などにより、水生生物のハビタットが消失するなどの問題が発生しており、2001年6月の土地改良法改正によって、環境との調和に配慮した農業農村整備事業が求められることになっている。イシガイ科二枚貝の多くが環境省レッドデータブックで何かしらの指定を受けており、都道府県レベルではすでに絶滅したとされる種もある。イシガイ科二枚貝は魚類を交えた共生関係を持ち、生息場所の流速、底質などその場のローカルな物理環境だけでなく、土地利用形態や水路の連続性など広域の物理環境も生息の可否に影響いていると思われる。例えば土地利用形態の場合、市街地化が進むことでコンクリートにより固められる水路が増える、あるいは生活排水の流入増加で水質が悪化するなどといったプロセスを経てイシガイ科二枚貝の生息に影響を与えると推測される。このような周辺土地利用形態の影響を検討した研究は稀有である。そこで本研究では、広域データを用いたGISによって、周辺市街地化の程度の観点からイシガイ科二枚貝の生息地点を特徴付けることを目的とした。 |