タイリクバラタナゴは、第二次世界大戦中の1940年代前半、中国から食用としてソウギョ、ハクレンなどを日本(主に利根川水系)に導入する際、これらに混じって運ばれてきたと言われる。20世紀後半には、イケチョウガイなどの淡水二枚貝の移動、琵琶湖産アユの放流、琵琶湖・淀川水系からのヘラブナの移殖、ペットショップでの流通、飼育個体の放流や遺棄などによって、全国各地へ同時に分布を広げていった。(ウィキペディア2011)。木曽川水系では、1930年代にはバラタナゴは一尾も確認されていなかったが(丹羽 1957)、1960年代には本種の繁殖が報告され(中村 1969a)、1970年代に行ったイタセンパラ生息ワンド域における調査では、イタセンパラ34尾に対してタイリクバラタナゴ287尾と優先して捕獲されている(浅野 1977)・中村(1969b)は、岐阜県大垣市におけるイタセンパラの急激な減少に伴うタイリクバラタナゴの著しい繁殖を例に、両者の間に何らかの種間関係があることを指摘している。両種の間には産卵母貝や餌生物の奪取で競合が生じている可能性もあり、木曽川におけるイタセンパラ保全のためには、以上に着目した研究が不可欠である。以上を踏まえ、本発表では両種の餌生物を明らかにするために、安定同位体比を用いた解析を行ったのでここに報告する。 |