地すべりが発生した場合には、速やかに地すべり調査を行って応急対策を行うことで、地すべりや二次災害の発生を回避・軽減することができる。地すべり調査では、地すべりの範囲、すべり面の形状、移動速度を把握するために様々な調査・観測が行われる。調査の中でも、地中に存在するすべり面の形状を把握することは難しく、一般にボーリング調査による地質の確認や調査孔を活用した動態観測により把握されている。しかし、地すべり活動域での調査ボーリング作業は安全面に置いて課題がある。これらのことから、地すべり活動域への立ち入りを極力少なくし、すべり面形状を迅速に把握できる手法が求められていた。 このすべり面形状を求める技術の一つとして、地表面の変位ベクトル(以下、地表面変位ベクトル)からすべり面形状を推定する方法が1985年に提案されている。これは、地表面変位ベクトルとすべり面における変位ベクトルが同一であると仮定して、地表で得られる情報から地下のすべり面を推定したものである。その後、地すべりの断面を複数の区間に分割し、各区間のすべり線を直線連ねる方法や、全体を一本の曲線で表す方法が開発された。土木研究所では、これまでの成果をもとにこの技術をさらに高度化させるとともに、計算プログラムを取り扱いやすくし、ユーザーが実務で使いやすいように実用レベルまで発展させた。 |