施工の効率化や精度の向上,品質管理の合理化等を目的にICT 施工の積極的な導入が推進されている.平成20 年7 月には「情報化施工推進戦略1)」が策定され,ダム分野においてもICT 施工の導入が重要であると位置づけられている.しかし現状では,ロックフィルダムの盛立においてはICT 施工が試験的に導入されている事例はあるものの,従来の管理方法と併用されており,品質管理の合理化までには至っていない.これまでのロックフィルダムにおける品質管理方法は,事前の試験施工により決定した規定の締固め度を達成するための施工仕様に基づき,材料粒度,含水比,締固めエネルギー(まき出し厚,締固め回数等)を管理する工法規定管理が行われている.さらに,締固め後に一定の頻度で現場試験を点的に実施する品質規定管理との併用により盛立後の品質を確保している.一方,盛立面での現場試験は,試験中に盛立を中断する必要があり,施工効率化を妨げる要因となっていることから,適切な品質評価に基づいた試験頻度の低減が求められている.ICT 施工を管理に導入した場合,まき出し厚,締固め回数等,施工プロセス管理の確実性を向上させることができる.これらに加えて,盛立材料の粒度と含水状態をより適切に行うことにより,期待する締固めを盛立面全体に担保することが可能となり,現場試験の頻度を低減できる新たな品質管理が可能になると考えられる.平成 23 年度に竣工した殿ダム(国土交通省中国地方整備局)の盛立工事においては,材料の運搬,まき出し厚,締固め回数等の施工プロセス管理にICT が導入されたうえで,品質管理試験データが得られている.本論文では殿ダムコア材の品質管理試験データを用い,搬出時及び盛立面での粒度試験結果を区分し,締固め後の試験結果との関係を分析することにより,材料のより厳密な管理が盛立品質の向上へ与える効果について評価するとともに,新たな品質管理方法の方向性を示した. |