大規模な斜面においては、雪崩対策にあたって雪崩予防柵等の発生区対策よりも雪崩防護工等の走路・堆積区対策の方がコストや自然環境への影響などにおいて有利な状況も多い。しかし、現在日本で雪崩対策のために雪崩の到達距離や雪崩層厚を求めるには、最大到達距離を与える見通し角を経験則から求める手法や、開水路流れの理論を応用した単純な1次元流体モデルが用いられている。雪崩層厚は、過去の雪崩災害調査から流下距離が100 m増加するごとに雪崩層厚が1 m増加するように設定されるが、雪崩防護工の高さは設計積雪深に雪崩層厚を足して設計されるため、走路の長い斜面に位置する既存の施設で高さ10 m以上の非常に大規模なものになる場合があり、コストの増大が懸念されている。また、地形による層厚の変化(開けた地形と谷状地形の違いなど)も考慮されていないため、現実よりも過大な層厚にもとづいた設計になっている場合もあることが予想される。そこで、雪崩の速度や層厚分布の計算が可能なモデルについて、近年土石流や地すべりなどを対象とした分野で発達が見られる数値シミュレーション技術の雪崩に対する適用性について検討している。崩壊土砂に関する連続体モデルを用い雪崩シミュレーションを開発し全層雪崩事例の解析を行ったところ概ね雪崩の状況を再現できた。本報告では、連続体モデルを用いた雪崩対策施設の設計手法について検討するために、同一の雪崩事例について連続体モデルを用いた手法とフェルミーモデルを用いた手法の双方で解析を行いそれらの結果を比較した。 |