我が国の道路橋は、橋長15m以上の橋で約15万橋ある。このうち、昭和30年代に始まる高度成長期に大量に建設された橋が、今後一斉に建設後50年以上を経過してくる。これまで定期的な橋梁点検を実施していなかった市区町村においても点検が着手され、通行規制橋梁が増加している。道路橋の6割を占めるコンクリート橋においては、塩害による鋼材腐食、グラウト充填不良、ASRによるひび割れ等が生じており、通行止めはしていたものの撤去前に崩落した事例もある。今後高経年構造物が急増していく中で、重篤損傷橋梁の増加が想定され、損傷橋梁の健全性診断手法の高度化が急務である。 CAESARでは道路橋のメンテナンスに関する技術開発の為に、実際の橋梁を用いた臨床研究を進めているところである。損傷コンクリート部材の耐荷力評価法を確立するために、塩害により損傷した橋梁の一部を切り出し、載荷試験・解体調査を実施した。その結果、曲げ耐力は主としてコンクリート中の鋼材の状態により説明が可能であることを確認した。ただし、鉄筋腐食による断面積の減少は一律ではなく、それをどのように測定するか、評価するかが課題としてあげられる。 供用中の構造物においては、健全性診断のために解体調査を行うことは出来ないため、非破壊検査によりコンクリート中の鋼材の腐食状況、残存断面積を把握することが必要となる。現在実橋で用いている検査技術では限界があり、革新的な技術が期待される。他分野の技術も含め、新しい技術を道路橋管理に取り入れるため、また、技術開発を促すために、CAESARメンテナンス技術交流会を設立し、活動を始めたところである。撤去部材や実橋を用いた非破壊検査による調査等を行っていくので幅広い分野からの参加を期待している。 |