中小河川では河川改修や災害復旧事業に際して、河川断面を単断面とし、河道拡幅を最小限として河床を下げ、両岸を立ち護岸とする改修が一般的に行われてきた。しかしながら、出水によって極度の河床洗掘が生じる例も見られ、改修後の補修に要する維持管理が不可欠となる川づくりとなっていた。このような状況の中で、平成22年に改訂された「中小河川に関する河道計画の技術基準」では、川幅拡幅によって流下能力を確保し、河床にかかる掃流力をあげない改修を基本方針の1つとしている。 一方で、川は、日常から生物の生息場としての貴重な空間となっている。生物の生息場は、対象とする生物の生息スケールによって確保すべき要素が異なるが、例えば、Frissellらの示すハビタット・スケールでみると瀬・淵の有無が生物多様性を高めるのに重要な要素とされる。瀬・淵の形成は、出水時の流水と流砂の相互作用によるもので、水工学での研究成果をもとに生物生息場に配慮した川づくりへと発展できる可能性がある。そこで本研究では、中小の実河川を対象に行った調査データをもとに、水工学的な見知から生物生息場の確保を可能とする最小限の川幅の設定をどのように考えればよいかについて考察した。 |