海岸地域での仮置きや海上輸送がなされた鋼構造物部材には多量の塩分が付着している可能性があり、塩分が素地調整時に鋼材面に拡散したり、塗膜に悪影響を及ぼしたりするのを回避するために、水やスチームで部材を洗浄するのが良いとされている。一般に、被塗面に50mg/m2を超える塩分が付着しているまま塗装すると、所定の塗膜性能が得られず、早期に層間はく離や膨れ等の異状が生じるとされている。そのため、「鋼道路橋塗装・防食便覧」等では、上記のように塩分付着が懸念される部材表面や素地調整後の仕上がり面では、付着塩分量が50mg/m2以下となるよう管理することが推奨されている。一方、海岸・海浜地区の現場において鋼構造物の塗装を行う際には、塗装作業中に飛来し塗料内あるいは塗膜層間に取り込まれる海塩粒子についても配慮すべきであることは容易に想像できるが、その塗膜性能への影響の大きさや機構については十分に理解されておらず、実際の塗装工事において適切な管理がなされているとは言い難いのが現状である。そこで本研究では、土木鋼構造物の現場塗装時に飛来する塩分が塗膜性能に及ぼす影響を明らかにすると共に、その影響を排除する手法を確立することを目的としている。本報では、現場での塗装作業を通じて塗膜の中に取り込まれる塩分量や、その部位(桁の内外、ウェブの上部・中部・下部、フランジの上面・下面など)による違いといった基礎的なデータを取得するために、沖縄県大宜味村において鋼鈑桁橋を模擬した試験体の塗替塗装試験を行い、工程毎、部位毎に表面塩分量を測定した結果について報告する。 |