ダムの存在・運用によりダム下流を流れる河川では、流砂量の減少や水質・流況の変化が生じ、その変化がダム下流に生息する底生性生物(付着藻類や底生動物)に様々な影響を及ぼすことが示されてきた。ただし、ダムの上流部と下流部とを比較した研究では、常に下流部の方が流域面積は大きくなることから、単純なダム上流と下流における付着藻類や底生動物群集の比較だけでは、ダムの影響を検証するには不十分である。そこで、本研究では、ダムの上流と下流との間にある、付着藻類および底生動物群集の差異が流域面積に依存してどのように変化するかについて検証を行った。調査は、ダムの流域面積が異なる5つのダムを対象に(阿木川ダム、小里川ダム、君ヶ野ダム、上津ダム、日吉防災ダム)、各ダムの上流と下流部で行った。また、リファレンスとして上流にダムが存在しない2地点(土岐川)でも調査を行った(計12地点)。解析の結果、流域面積と付着藻類群集の間には明確な関係性はみられなかった。一方、底生動物の個体数は流域面積に関わらず下流の方が多く、乾燥重量は上津ダムを除き、下流の方が大きかった。確認された種数について、リファレンスでは上流と下流との差は小さかったが、ダムによっては下流で増加していた。また、上流と下流との流域面積の差が大きくなるほど、上流と下流の匍匐型に該当する種群の組成は異なる傾向にあり、一方、造網型に該当する種群の組成は類似する傾向にあった。本発表では、付着藻類および底生動物群集に対するダムの影響は流域の大きさによって変化するかについて、生物の生活様式及び河床環境に注目して議論を行う。 |