自然または人為的な影響により高濃度の浮遊物質を含む濁水が河川に流入することで、河川環境に様々な影響を及ぼすことが報告されている。濁水の影響を受ける生物の中でも、河床に固着する付着藻類は忌避行動ができないため、濁りの影響を受けやすいと考えられる。付着藻類は、アユやヤマトビケラ等の植食性生物の主要な餌資源となる。そのため、付着藻類の生長に係わる一次生産に濁水がどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることは、水生生物の保全を考える上で重要な知見となる。 濁水が河川環境に与える影響として、河床に到達する光の量が、濁水に含まれる無機物により減少し、付着藻類の一次生産速度(光合成により無機物から有機物を合成する速度)が低下することが報告させている。一方、濁水に含まれる無機物は、付着藻類を含む膜(以下、付着膜)に堆積し、濁りが収まった後も付着膜に残存する。さらに、濁りが強いほど、多くの無機物が付着膜に堆積することが報告されている。付着膜に無機物が堆積すると、付着藻類まで到達する光の量が減少し、付着藻類の一次生産に影響が及ぶと考えられる。しかし、既存の研究は、濁水中に浮遊する無機物に注目したものが多く、濁水が収まった後も、堆積したままの無機物の影響に関する知見は少ない。 そこで、本研究では、濁水に含まれる無機物が堆積し、付着膜の無機物量が変化することで、付着藻類の一次生産速度がどのように変化するのかを明らかにすることを目的とした。 |