現状の路面下空洞調査における空洞判定は、解析者の技能が重要視されている。判定では、白黒濃淡表示されたGPR(地中レーダ)データから異常箇所を抽出し、それが空洞かどうかについて、目視による経験的な判断がなされている。また、検出された空洞の多くは薄く、陥没しても交通への影響が小さいものも少なくない。路面が陥没した場合に交通事故を引き起こすリスクには、空洞の深度・平面規模・厚さが効いてくる。深度・平面規模については従来の解析技術でも評価が可能であったが、空洞の厚さまで解析することは困難であった。千葉県の東京湾岸地域でH24年度に検出された路面下空洞(29件)の空洞厚を見ると、この中で空洞厚が0.3m以上の空洞はわずか2件であった。路面陥没による事故発生のリスクが高い空洞を迅速に把握するためには、空洞厚を知る必要があり、空洞厚を解析するためには、電磁波の反射の現象を忠実にかつ現実的に模倣することが重要である。つまり、解析技術の客観化が必要と考える。 本研究では、田中(2005)の信号伝播モデル法を路面下空洞探査のGPRデータに適用し、空洞厚を解析した結果を報告する。近年の電子回路技術の発展によりGPR探査装置のスキャンレートが高速化しており、車両に搭載することによって、時速60kmでの走査も可能になってきている。短期間に膨大なデータが取得可能になる一方で、解析技術はより客観化かつ効率化させることが必要と考えられる。特に早急に対応すべき空洞を迅速に把握することは重要であるが、従来の解析では空洞厚の推定が困難なため、十分な対応ができていなかった。今回、信号伝播モデル法を適用し、客観的な解析をした結果、空洞厚を精度良く推定することができた。今後の路面下空洞探査をより効率化するためには、このような客観化解析方法を普及させることが不可欠と考えられる。 |