従来,貯水池の濁水シミュレーションにおける土粒子の沈降速度の設定については,採水した濁水をレーザー回折・散乱光法(以下,「レーザー回折法」と略す.)を用いて粒度分布を分析し,ストークス式を用いて沈降速度分布に変換する手法が多く用いられてきた.しかしながら,レーザー回折法による粒度分布をもとに沈降速度分布を求めた場合,実際の沈降速度分布と差異が生じることが懸念される.本報では,小規模な沈降管を用いて土粒子の粒径と沈降速度を直接測定し,ストークス式を用いて求めた沈降速度と比較した.結果を,以下にまとめる.・利根川水系山口川において採取した4検体の試料の粒径と沈降速度を測定した結果、各試料とも粒径が増大するに従い沈降速度が上昇する傾向が見られた.・現地採取した土粒子も,複数の粒子が凝集してフロックを形成している様子が見られた.しかしながら,単一粒子と見られる土粒子も観察され,同一粒径に対し沈降速度がばらつく原因と考えられた.・現地採取した土粒子の沈降速度は,ストークス式より求めた沈降速度より遅い結果となった.レーザー回折法を用いて試料の粒度分布を求め,ストークス式を適用して沈降速度に変換した場合,沈降速度を過大に評価すると考えられた. |