高度経済成長時に建設された多くの下水処理場は、更新時期を迎えるなか、処理場の消毒施設の耐震化率は10%と低く、今後、重点的に改築・更新が行われる。現在、多くの下水処理場での消毒は塩素消毒が採用されているが、耐塩素性病原微生物の問題等から、水系感染症防止のための代替消毒法の検討が必要であると考えられる。その代替消毒法として紫外線消毒の適用可能性がある。紫外線消毒設備を有する下水処理場は全国142ヶ所(導入率=6%)(低圧紫外線:119ケ所、中圧紫外線:17ヶ所、ランプ種不明:6ヶ所)あるが、下水の病原微生物に対する紫外線の効果、特に培養法が確立していないノロウイルス(以下NoVと記す)に関しての知見が非常に少ない。また紫外線を下水処理の消毒に適用する場合は、SS、濁度等の水質性状の変化による消毒効果の影響を把握しておくことが重要である。そこで、本研究では、水質性状の異なる下水を試験水として用い、NoVを対象に低圧紫外線ランプを用いた紫外線消毒によるNoV遺伝子への影響を把握することで、消毒効果の有効性について評価した。また、試験水に予め作成した大腸菌phage MS2(以下MS2 と記す)を添加しMS2とNoVの除去性の関連についても検討を行った。 |