化学物質による生態系への影響評価は種レベルの毒性試験データから算出される指標値(PNECやHC5)に基づいて行われている.一方で,群集レベルの実験結果はほとんど活用されていない.マイクロコズムやメソコズムなどの試験法はOECD,US EPA,ASTM International等が公表しているが,構成種の多さや,種レベル試験と直接比較できる群集レベルのエンドポイントが定められていない等の問題がある.また,種による感受性の違いとそれによる生物間相互作用の攪乱,表現型可塑性への影響,休眠卵(休眠細胞)からの孵化(発芽)などの影響により,種レベル試験と異なる結果が得られることも多い.そのため,これらを考慮しながらも現行の毒性試験結果と直接比較可能な群集レベルでの指標を定める必要がある.本研究では,「既存の毒性試験結果と結果を直接比較できること」,「容易に実施できること」,「再現性が高いこと」を重視し,標準試験生物であるムレミカヅキモ(Pseudokirchneriella subcapitata)とオオミジンコ(Daphnia magna)を構成種とした単純なマイクロコズムを構築した.殺虫剤フェニトロチオン,除草剤シメトリン,銀ナノ粒子(ナノコロイド)を試験物質とし,マイクロコズム試験で得られた結果を現行の種レベル試験と比較した. |