国立研究開発法人土木研究所

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発表 水系内魚類集団の動態解析に遺伝情報を適用する際の留意点

作成年度 2015 年度
論文名 水系内魚類集団の動態解析に遺伝情報を適用する際の留意点
論文名(和訳)
論文副題
発表会
誌名 DNA多型 Vol.23
巻・号・回 23
発表年月日 2015/07/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態村岡敬子
河川生態萱場祐一
㈱建設環境研究所太田宗弘
㈱建設技術研究所飛鳥川達郎
中電技術コンサルタント㈱安形仁宏
抄録
土木研究所では、河川環境調査への遺伝情報の活用を目指した研究を行っている。魚類への遺伝情報の活用にあたっては、日本に自然分布する淡水魚115種内外全体が対象として想定されるものの、これらの魚種全てに検出感度の高い遺伝マーカーがあるわけではない。また、基本的に同一水系で一生を過ごす淡水魚では、他水系の同種で開発された遺伝マーカーが利用できない場合も想定される。そこで、対象魚種の遺伝子配列があらかじめわかっていなくても適用が可能なAFLP法を対象に検討をおこなってきた。これまでの土木研究所の検討ではニッコウイワナを対象に、AFLP法がマイクロサテライト法と同等の検出感度を有することが示されている。一方で、別の農業水路においてAFLP法を適用した実験では、閉鎖された水域に生息する同じ魚種では、遺伝的差異が極めて小さく、分析の再現性に留意する必要があることが明らかとなっている。 実際の河川環境調査への遺伝情報の活用のためには、信頼性と再現性が求められるが、AFLP法によって微細な差異を検証する場合、実験誤差の影響を受ける可能性がある。そのため、異なる分析機器を用いた場合や、複数の分析者が分担してこれを行う場合も安定した結果が得られるのか検証が必要であった。そこで、土木研究所の公募によって選ばれた民間コンサルタント会社3社(㈱建設環境研究所・㈱建設技術研究所・中電技術コンサルタント㈱)と土木研究所は平成24年度より3カ年にわたり、複数の堰堤が存在する一級河川において魚類の移動環境の評価をテーマに共同研究を実施した。調査範囲の堰堤には魚道が設置されるなど、魚類の移動環境の確保に配慮がなされている。これら堰堤等により下流から上流への魚類の移動が困難な場合には、堰堤上流の集団と下流の集団間に遺伝的な偏りが生じることを利用し、魚類の移動環境を評価しようとしたものである。 共同研究の結果、異なる分析装置・複数の分析者による結果は同様であり、再現性は確認できた。一方で、同一水系内に生息し、かつある程度の移動環境が整い、堰の上流と下流で遺伝的な偏りが明確でない現場においては、サンプリング地点の選定の仕方やAlleleデータの抽出時の工夫など、さらなる配慮事項が必要と考えられた。
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