河道内氾濫原の沈水植物群落を対象に,分布状況の変遷を把握し,成立条件について地形変化や環境因子との対応から明らかにした.揖斐川の31~50kmの区間を対象とし,まず,河川水辺の国勢調査の植生図から,1997年,2002年,2007年,2012年の沈水植物群落の分布位置と面積を集計した.さらに,2015年に19箇所のたまり,7箇所のワンドを対象に現地調査を行い,植生と環境因子を調査し,各水域の成立年代と地形変化を把握した.植生図を用いた解析から,在来の沈水植物群落は最近15年間で大幅に減少し,外来種の群落へと遷移したことが示された.現地調査結果から,無植生の氾濫原水域は成立年代が古く,地形が堆積傾向にあった.土砂供給によって埋土種子や植物体が埋没した可能性がある.一方,植生がみられた水域は,成立年代が新しく,地形が侵食傾向にあった.オオカナダモなど外来種群落の多くはワンドに成立し,流速,透視度が高かった.本川には大量の外来種の切れ藻が流下しており,本川と常時接続しているワンドでは,切れ藻が供給される機会が多かったと考えられる.孤立し嫌気的な環境となったたまりにも外来種が優占した.一方,在来種が優占したたまりは泥厚やECが低く,伏流した流路の水や湧水の流入による小規模な撹乱を受けることで維持されていると考えられた.外来種の多い河川において氾濫原植生の再生を目的にワンドを創出した場合,外来種群落が成立する可能性がある.また在来の沈水植物群落再生にたまりは有効であるが,増水時に冠水しない条件下では堆積と嫌気課程が容易に進行するため,個体群を長期間維持することは困難であると考えられる. |