ダムによる土砂杵止に対する対策として、ダム下流への置き土や土砂バイパスなどの土砂供給が計画されることがある。これらの対策によって、物理環境(水深、流速、底質など)が変化するため、それに伴う生物への影響を予測・評価する必要がある。その手法のーっとして、生息場所の震と量の変化を定量化できるPHABSIM(PhysicalHavitatSimulation)の援用が考えられる。このPHABSIMの重要な要素となるのが、物理環境に対する適性値であり、対象生物の物理環境要素の利用状況(選好性)を基に作成される。適性値は、対象生物の選好性を環境の質に反映できる長所を有する反面、利用できる物理環境の多寡によって変動する可能性があるとしづ短所も有する。特に、ダムからの土砂供給が検討される地点では、物理環境に大きな偏りが見られることもあり、既存の適性値のが利用できるか不明である。既存の適性値の適用可能性が確認されれば、現地調査の省力化や確認されていない種に対する潜在的な影響の推測も可能となり、効率的な土砂供給の方法を検討することができる。そこで、本研究ではPHABSIMの適用事例が多く、既存の適性値を利用しやすい魚類を対象に、ダム現地調査による適正値と既存の適性値を比較することで、既存の適性値の適用可能性について検討することを目的とした。 |