現在、直轄ダム等において試行しているロックフィルダムの耐震性能照査では、堤体材料の非線形性を考慮するために繰返し三軸試験により動的変形特性を設定する必要がある。しかし、繰返し三軸試験を実施していない既設の古いダムなどでは、堤体材料の岩種、間隙比や内部摩擦角などの物性値が類似するダムの動的変形特性を用いて、地震時の耐震性能を照査している場合が多い。そこで、採用されている動的変形特性を整理し、その傾向を把握することや動的変形特性が及ぼす影響について検討することはフィルダムの耐震性能照査にとって重要であると考えられる。また、地震時のフィルダムのすべり変形量を精度良く推定するためには、室内試験や同定解析を実施するなど、多くの時間とコストが必要である。そのため、今後、多くのフィルダムの耐震性能照査を実施するにあたり、詳細な検討が必要なダムを効率的に抽出するための簡易的な耐震性能の評価方法が求められる。本検討では、まず、照査指針(案)による耐震性能照査の試行を実施したロックフィルダムについて、照査試行報告書などから物性値(初期せん断剛性、動的変形特性、せん断強度)の整理を行った。次に、整理した物性値により代表値を設定し、その代表値を用いて、堤高100mのモデルロックフィルダムのすべりによる塑性変形解析を実施することで、ロック材のせん断強度が及ぼすすべり変形量への影響を検討し、簡易的に耐震性能を推定する手法について検討した。 |