降雨による洪水被害が想定される河川には、国や地方自治体などの河川管理者により、その被害の防止・軽減のため「排水機場」と呼ばれるポンプ設備が設置される。排水機場は、平時には停止状態であるが、洪水が予測される降雨時に運転される。 排水機場は極めて重要な社会インフラであり、洪水被害防止のため確実な稼働が要求されているが、反面、公共事業予算の大幅削減による維持管理費の減少と、設備の老朽化(今後10年で、設置後40年を超えた設備が5割超)による信頼性の低下が懸念されており、このような状況下で、より効果的、効率的な維持管理を行うことが求められている。 そこで、現在の時間計画保全による維持管理からコスト的に有利な状態監視保全への移行がきわめて有効と考えられるが、本来、状態監視保全は常時稼働している常用設備に対して行うものであり、排水機場のように必要時のみ運転する「非」常用設備に対しては適用が疑問視されており状態監視保全技術も確立されていないのが現状である。 そこで独立行政法人土木研究所では、平成22年度より、排水機場ポンプ設備の原動機に関しては潤滑油分析、主ポンプについては振動法、減速機については両方式の併用による状態監視保全技術の確立について検討を重ねてきた。本稿では潤滑油分析による排水機場ポンプ設備の状態監視保全技術について概説する。 |