東北地方太平洋沖地震をはじめとした過去の地震においては,鉄筋量の少ない未補強の壁式RC橋脚の橋座部において,支承から伝達された地震力の作用によりせん断ひび割れが発生した事例が報告されている(写真-1)。この種の損傷は余震によりせん断破壊する可能性があり,当該支点が桁端部の場合だと落橋に至る危険性があることから,地震後全面通行止めとなることが多い。RC橋脚に対する耐震補強は必要なものから順次進められてきてはいるものの,今後発生する大きな地震により,耐震補強がまだ実施されていない同種のRC橋脚には同様な被害が生じる可能性がある。したがって,このような橋に対して機能回復を速やかに行うという視点からは,有効な応急復旧技術についても事前に検討しておくことが重要である。これまで一般的なRC橋脚躯体部に対する応急復旧工法は,堺らの研究2)や道路震災対策便覧3)で応急復旧工法の例が示されているが,壁式RC橋脚の橋座部の損傷を対象とした応急復旧工法はこれまでにあまり検証されていない。そこで本研究では,既往の震災で橋座部での損傷事例があり,橋としての機能に影響をもたらしたせん断損傷に対して,地震発生直後の災害復旧の現場に固有な制約条件がある中で実施可能な応急復旧工法を提案する。そして,壁式RC橋脚の供試体に対して橋座部のせん断破壊を再現し,提案する応急復旧工法を施した上で再度漸増載荷することでその復旧効果を検証した。 |