大規模地震動に対するダムの耐震性能照査を行う上では,当該ダムの実際の動的挙動を再現できるよう堤体や基礎岩盤の物性を適切に設定する必要がある。ダム堤体の弾性係数などの同定は実際に当該ダムで観測された地震動観測記録から得られるダム堤体の固有振動数などの振動特性に着目して行われることが多い。しかし,このようにして得られた結果には貯水位の影響や外気温の影響が含まれていると考えられる。また,ダム堤体の振動特性の変化はダムの健全度診断にも有効な指標を与えるものと考えられるが,経年的な劣化による影響については,貯水位変動や外気温変動がダム堤体の振動特性に与える影響を適切に考慮したうえで評価する必要がある。本論文では,大規模地震時の強振動を含む比較的多くの地震動が観測されている重力式コンクリートダムでの地震動観測記録や常時微動計測によって求められた固有振動数を用いて,貯水位変動および外気温変動がダム堤体の固有振動数などの振動特性に与える影響について分析を行った。その結果,当該ダムの固有振動数は,明らかに貯水位とともに温度変化の影響を受けていることがわかった。また,この原因について、横継目での変位計測データの分析およびモデルダムでの数値解析により考察した。 |