現在わが国では,高度経済成長期の1960~1970年代に建設のピークを迎えたダムが管理開始数十年を経過するなど,管理開始後長期間が経過するダムの数が急増しつつある。ダムは,更新に多大な費用と期間を要することや,更新期間中の代替機能確保の困難性から,全面的な更新にはなじまない構造物であり,その安全性及び機能を今後も長期に保持していく必要がある。このような中,平成25年10月に「ダム総合点検実施要領」が国土交通省から発出された。ダム総合点検は,ダム本体の長期的な経年変化の状況やダム構造物の状態等に着目し,ダムの健全度について総合的に調査及び評価を実施し,その結果得られる維持管理方針を日常管理や定期検査等に反映させ効果的・効率的なダムの維持管理を行うことを目的としたものである。また,このダム総合点検は,河川管理施設等を良好な状態に保つよう維持・修繕すべきことが明確化された河川法改正(平成25年12月)を受けて制定された国土交通省河川砂防技術基準維持管理編(ダム編)でもその位置づけが明記されている。本稿では,「ダム総合点検実施要領・同解説」に基づき,ダム総合点検の実施手順等について概説するとともに,現在,国土交通省所管ダムを中心にダム総合点検が実施されつつあることを踏まえ,ダム総合点検を実施する際の技術的留意点について,ダム堤体及び基礎地盤等のダム土木構造物に関して述べる。 |