河川堤防の耐震性能照査においては,液状化層の剛性を低下させ自重による地震時残留変形を求める有限要素法である安田らの方法(以下,ALID)が実務において用いられることが多い.河川堤防の耐震性能照査指針に準拠して液状化強度比などの地盤物性を設定し,ALID により解析を行うと変形量が過大に算出される傾向にあることが明らかとなっている.過大に算出される変形量に対して,筆者らは液状化層のせん断剛性に鉛直有効応力に応じて補正係数をかける方法を提案した.河川堤防はこれまでの被害事例で堤防高に対する沈下率が,75%を超える沈下量は確認されたことがない.このため,ALID による沈下率が75%を超えた場合には,堤防の75%が沈下するものとして耐震性能を照査している.これは,主に堤防が液状化層に沈み込む際に生じる浮力の影響によるものと言われており,堤体の重量と浮力との釣り合いから概ね説明されている5).しかし,微小変形理論に基づくALID による解析では,前述した補正係数をかける方法を用いても,地盤条件によっては沈下率が75%を超える沈下量が算出される場合がある.そこで,本研究では,浮力の影響を簡易に評価するために仮想バネを用いた数値解析を行った. |