近年、河川敷に竹林が多く目立つ、河川敷に生育する竹林は、かつて、防備林や生活の材として利用されるなど生活に欠かせなかった。昭和40年代以降に河道が整備される中で、耕作放棄地も増え、河道内に管理の行き届かない竹林が多く生育するようになった。拡大した竹林は、治水面で見れば、洲の固定化や流下断面の不足、護岸や堤防に竹の根が入り込むことで弱体箇所が生じるなど治水の安全性に影響する可能性がある。また、堤防上からの見通しが悪くなることで、竹林内に不法投棄が増えるなど、維持管理の面からの課題も増えつつある。さらに、竹林が大きな群落を形成すると、林下に他種が侵入できず種の多様性の低下に繋がっているなど、環境面からの課題も顕在化してきている。 本報で対象とした木曽川北派川では、河跡湖(通称で笠松トンボ池と呼ばれる)が取り残されており、その周辺には竹林(マダケ林)が多く生育している。過去には、池やその周辺に、沈水植物やトンボなどの生物が確認されていた。しかし、近年は、池に難分解性のリターが堆積するなど、水質が悪化し透明度が低下したため沈水植物が減少したほか、池周辺においてトンボの餌となる昆虫が生息する草地も減少した。このように、管理が放棄され竹林が分布を拡げた結果、生物の生息場が減少し、かつての地域のシンボル的存在であった環境が失われつつあった。この解消のため、市町村や地域の小学校との共同のもと、竹林の除去と持続的な管理を行うための対策が模索されるようになった。 これまでの検討から、竹林を除去する対策としては除根が有効であることが示されている。しかし、整備後に地上や地下にわずかに残った根(地下茎)からの再生が危惧されるほか、冬期に裸地状態のまま春季を迎えるため、好光性の繁殖力が旺盛な外来草本が一面に繁茂する可能性も高く、整備後に好ましくない遷移が生じることも考えられた。そこで、整備後の植生管理の1つの手段として、植生遷移を能動的にコントロールすることを目的に、伐竹・除根後にオギの地下茎を移植することで、その対策効果についての実証実験を行うこととした。 |