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発表 土砂災害防止法に基づく基礎調査の結果を用いた流出土砂量の評価

作成年度 2014 年度
論文名 土砂災害防止法に基づく基礎調査の結果を用いた流出土砂量の評価
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第59回水工学講演会
誌名 土木学会論文集B1(水工学)2015 Vol.71 No.5 
巻・号・回 Vol.71 No.5 
発表年月日 2015/03/10 ~ 2015/03/12
所属研究室/機関名 著者名(英名)
独立行政法人 土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター高岡広樹
独立行政法人 土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター原田守啓
独立行政法人 土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター大石哲也
独立行政法人 土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター萱場祐一
抄録
 近年,直轄河川区間において,河床低下に伴う澪筋の固定や砂州の樹林化が散見され,問題となっている1).また,さらに河床低下が進行し,局所的な深掘れが生じている木曽川の事例2)等も報告されている.河床低下の原因の1つとして,支川からの流入土砂の減少が考えられる.事実,大石ら3)が岐阜県の中小河川を対象に行った調査では,岩盤が露出している河川が多く見られた. これらの問題解決に向けては,流出土砂の量と質を評価する必要がある.流出土砂量の評価については,これまで,観測データに基づく方法や水理・水文学に基づく方法が行われている.観測データに基づく方法は,貯水ダムの比堆砂量と流域面積との関係式に代表され,地域特性があることが分かっている4).また,表層地質により土砂生産特性が異なることが示唆されている5)が,対象としているダムの流域が大きく,さまざまな地質から成っている場合がほとんどであり,定量的な評価には至っていない.しかしながら,堆砂量を用いた解析は,土砂流出をマクロに把握するには,非常に有用である. 水理・水文学に基づく方法は,流水と流砂の支配方程式に基づき解析するものであり,さまざまな土砂流出モデル6)が構築されている.いくつかのモデルでは,河床の粒度分布を考慮することにより,流出土砂の量と質を評価することができる.しかしながら,雨量や標高など多くのデータが必要であり,解析を行うには多大な労力を要する. 土砂生産源である山地では,不安定土砂の固定化や渓岸侵食を防ぐため,治山ダムが設置され,また,土石流災害を防止するため,砂防えん堤が建設されている.不透過型の砂防えん堤は,貯水ダムと同様,流出土砂を捕捉するため,砂防えん堤の堆砂量を対象とした研究も行われており,実測の堆砂量より,堆砂量推定式7)が求められている.しかしながら,統計解析で求められた式であり,物理的な意味が不明瞭で,適用範囲も限られている.砂防えん堤は全国的に数多く建設されており,流域面積が小さく,表層地質も均一である場合が多く,砂防えん堤の堆砂量の解析は,流出土砂の特性の把握に適していると考えられる. さて,2001年,「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(通称:土砂災害防止法)が施行され,土砂災害から国民の生命を守るため,土砂災害のおそれのある区域について,危険の周知,警戒避難態勢の整備,住宅等の新規立地の抑制,既存住宅の移転促進等のソフト対策の推進が図られている.土砂災害としては,急傾斜地の崩壊(傾斜度が30°以上である土地が崩壊する自然現象),土石流(山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が一体となって流下する自然現象),地滑り(土地の一部が地下水等に起因して滑る自然現象又はこれに伴って移動する自然現象)を対象としている. これを受け都道府県では,渓流や斜面など土砂災害により被害を受けるおそれのある区域の地形,地質,土地利用状況について調査(基礎調査)を行い,それに基づき,土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)や土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)を指定している.特に,レッドゾーンは,建築物に損壊が生じ,住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる区域で,特定の開発行為に対する許可制,建築物の構造規制等が行われる. 土石流の発生する恐れのある渓流(土石流危険渓流)の基礎調査では,流出する土石等の量に影響するため,砂防えん堤や治山ダムなどの対策施設の諸元や現況について,調査・整理されている.基礎調査は全国各地の土石流危険渓流で実施されており,その結果を用いて砂防えん堤の堆砂量が評価できれば,流出土砂の特性について,日本全国で把握することが可能となり,総合土砂管理などに非常に役立つものとなる. そこで,本研究では,土石流危険渓流の基礎調査で行われている砂防えん堤の調査結果を用いて,流出土砂量の評価を試みた.さらに,岐阜県長良川上流域へ適用し,流出土砂量の特性について検討するとともに,評価手法の課題について整理した.
本文表示【https://doi.org/10.2208/jscejhe.71.I_967】
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