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発表 降水現象の極端化に伴う流況変化等が河川生態系に与える影響に関する研究

作成年度 2014 年度
論文名 降水現象の極端化に伴う流況変化等が河川生態系に与える影響に関する研究
論文名(和訳)
論文副題
発表会 生態系を考慮した総合流域管理とリスクマネジメント
誌名 生態系を考慮した総合流域管理とリスクマネジメント
巻・号・回
発表年月日 2014/12/01
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム傳田正利
水環境研究グループ河川生態チーム萱場祐一
抄録
気候変動に起因すると考えられる降水現象の極端化は大規模な出水等を引き起こし、河川氾濫や土砂災害等により人間社会に大きな影響を与えている。これらの災害による被害の復旧、災害への対応は、喫緊の課題であることは言うまでもない。降水現象極端化への対応は、災害だけに目を奪われがちであるが、降水現象極端化は人間社会だけでなく、筆者らの研究対象としている河川生態系にも大きな影響を与えると推定される。極端な降雨現象の極端化は大規模な出水や平水流量が減少する期間を発生させ、この変化は河川水温にも影響を与えると考えられる。これらの流況変化は、河川流況に適応し、生育・生息する河川の生物(以下、「河川生物」と記述する。}・河川生態系に影響を与えることが推定される。人間社会へ大きな被害もたらす防災への対応が優先されるのは当然であるが、持続的な社会発展を実現するためには、環境(河川生態系)への配慮も着実に行う必要がある。しかし、降水現象の極端化に伴う流況変化等が河川生物に与える影響の因果関係を把握し、その機構解明、将来予測及び影響緩和策を検討することは容易ではない。この難しさは、(1)河川生態系を構成する物理環境、有機物動態は空間的に不均質性であり、かつ、時間的に変動すること、(2)河川生物は、これらの生育・生息環境の変化を巧みに自らの生活史に取り込み個体群の維持を図る特性があること、(3)河川生物の研究者が未だ経験したことがない変化が今後予測されるため、今後どのような変化が生じるかが予測不能のためであること、等に起因する。これらの問題に対応するには、河川生物に関する現地調査に加えて、数値シミュレーションモデルの活用が必要である。これらの問題に対応するため、筆者らは、河川工学と生態モデリングを融合させ、降水現象の極端化に伴う流況変化が河川生物に与える影響評価の再現・予測モデルを開発している。本研究は着手したばかりであるが、研究の初期段階の現在では、水生昆虫ヒゲナガカワトビケラ(Stenopsyche marmorata)を指標種としたモデルを開発している。水生昆虫を指標としたのは、降水現象極端化に伴う河川流況変化は、直接的な河川流況のみならず有機物動態、水温を変化させると推定され、ヒゲナガカワトビケラは、河川を流下する有機物を餌とし、その成長は水温変化に大きな影響をうけるためである。また、筆者らの研究により河川流況は個体群の再生に重要なに影響を与える、羽化・交配に大きな影響を与えることが確認され、本研究に適した指標種であると考えられる。本発表では、筆者らの開発しているシミュレーションモデルの概要、ヒゲナガカワトビケラの生活史の再現状況を紹介すると同時に、シミュレーションモデル上で、河川流況や水温変化を試行し、流況変化とそれに伴う水温変化がヒゲナガカワトビケラの生活史に与える影響を評価する事例を紹介する。同時に、流況変化に伴う河川生態系変化を引き起こす降水現象変化を特定するために必要な研究内容を整理し、降水現象変化が河川生態系に与える影響評価の研究の今後への方向性を整理する。
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