国立研究開発法人土木研究所

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発表 水生植物の生育環境としての農業用排水路の重要性について

作成年度 2014 年度
論文名 水生植物の生育環境としての農業用排水路の重要性について
論文名(和訳)
論文副題
発表会 第62回日本生態学会
誌名
巻・号・回
発表年月日 2015/03/18 ~ 2015/03/22
所属研究室/機関名 著者名(英名)
河川生態チーム片桐浩司
(独)土木研究所河川生態チーム萱場祐一
抄録
河川や湖沼周辺の良好な氾濫原が失われつつある今日、農業地域の水路は、湿地や水域の生物にとって氾濫原にかわる重要なハビタットのひとつになっている。水生植物については、これまで素掘りの水路が生育可能な環境とされてきたが、圃場整備後のコンクリート製水路はハビタットとしてはみなされず、水生植物の生育環境として評価されてこなかった。本研究では農業地域を対象に、圃場整備後の水路が地域の水生植物の種多様性にどのように貢献しているか、また水路のいかなる環境に群落が成立しうるのかを明らかにすることを目的とした。調査の結果、用水路で0種、排水路で28種、近隣の沼で24種、河川で11種、合計で34種の水生植物が確認された。排水路のみで確認された種は、稀産種コバノヒルムシロを含む9種であった。排水路は非共通種の割合が最も多く、他の環境にはみられない種が生育する環境要素として機能していた。CCAと分類木分析による生育環境解析の結果から、無植生群落は、速い流速、高水深、低泥厚で特徴づけられた。すべての用水路と一部の排水路が該当した。コウキクサ、ヘラオモダカなどの抽水・浮遊植物群落は、高EC、低DOで特徴づけられた。排水路と素掘り排水路の一部が該当した。コバノヒルムシロ群落は、遅い流速、低水深、高泥厚で、湧水からの距離が近いことで特徴づけられた。本群落は最近10年間で大幅に減少したが、この原因のひとつとして春先に実施される泥さらいが考えられた。周辺の土地利用はすべての群落の分布に影響しなかった。以上から、圃場整備後の農業水路であっても、生育基盤となる底泥が水流によって流出せず、水深や流速の異なる様々な条件や湧水が存在することによって多様な水生植物群落が成立しうることが示された。
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