ダム貯水池における堆砂問題の解決とダム下流における環境改善等を目的として、ダム貯水池に堆積した土砂を下流へ流す取り組み(以下「土砂供給」という。)が幾つかのダムで実施、計画されている1)。土砂供給にはダム下流に置き土を行う土砂還元、排砂トンネルによる供給等幾つかの方法があるが、供給する土砂の量・質(粒径等)、流量(Q)に対する土砂供給量(QS)やこれらの時間変化など(以下「土砂供給方法」という。)が自然状態と異なるため、ダム下流の河川生態系に影響を及ぼす可能性がある。そのため、その影響を予測し、影響が大きいと評価された場合には、必要に応じて土砂供給方法の再検討、影響軽減の検討が必要となる。土木研究所自然共生研究センターでは平成23年度より上記視点に立った研究を本格的に開始した。本研究では、土砂供給地点となるダム直下およびその下流域を対象とし、大礫・巨礫から構成される河床(粗粒化した河床)に砂~小礫程度の細粒土砂を供給した場合を想定し、河床環境(河床材料の粒度組成,河床近傍の流速等)の変化に対する水生生物の応答を予測・評価する手法の構築を行ってきた2),3)。本稿では、この中から土砂供給に伴う水生生物の応答を概説した上で、予測・評価の基本的な枠組みを示す。なお、付着藻類・底生無脊椎動物・魚類を対象とした予測・評価の具体的な手法の解説は別報4)に譲る。 |