家庭などから下水道に排出される生活排水には直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(LAS)をはじめとする界面活性剤や薬用石鹸等に用いられるトリクロサン(TCS)などの殺菌剤、および抗生物質などの医薬品等、水環境中に排出されると水生生物への影響が懸念される化学物質が含まれる。下水処理場は、生活排水、工場排水等を受け入れ汚濁物質を除去・削減したのち環境へ戻している施設であり、環境負荷削減に寄与している重要な施設である。下水処理場の一般的な処理方式である活性汚泥法は有機汚濁物質に加え、医薬品等の微量化学物質についても除去効果が大きいことが知られるが、一部の物質や他の排水処理方法の中には、生態リスクが懸念されるレベルで処理水中に化学物質が残存していることが明らかになっている1)。今後の水生生物保全に係る水質規制の強化の動向を鑑みれば、下水処理水中に残存する化学物質を安全レベルまで除去する手法の開発が望まれ、小森らの報告によれば、微生物担体をもちいた高度処理実験から下水処理水中に残存する化学物質はさらに低減できることが明らかとなっている2)。そこで、生物保持量が多いと考えられるスポンジ状担体は化学物質の除去に対し効果的であると予想し、(株)西原環境と国立研究開発法人土木研究所は生物担体による化学物質除去プロセスの実用化を目的として共同研究を実施したので結果を報告する。 |