道路構造物の計画的な維持管理には、点検→診断→措置→記録→(次の点検)というメンテナンスサイクルの構築が不可欠である。道路土工構造物については、構造物の機能に支障をきたす懸念がある変状を検出した場合、道路交通への影響等を踏まえ、点検、モニタリング、通行規制等を行いつつ、当面の安全を確保している。グラウンドアンカー(以下、アンカーと略)の維持管理は、目視を主体とする日常点検を実施し、機能不全が懸念される変状が検出された場合は、健全性調査を実施し、必要に応じて措置を施す。健全性調査は、頭部詳細調査やリフトオフ試験等を現場状況に応じて実施するが、調査には機材運搬等の手間と時間がかかり、アンカーの場所によっては調査が困難な場所もある。したがって調査のり面内のアンカー等をただ闇雲に調査するのではなく、調査するべきものとそうでないものにスクリーニングした上で調査を実施することが効率的であることから、簡易にアンカーのり面の変状箇所の有無をスクリーニングする方法の確立が望まれる。近年、熱赤外線カメラを利用した吹付のり面の背面空洞や湿潤等の状態を判定する調査が実施され、吹付のり面の老朽化診断として他の診断方法と比べ、効率的・簡易であり、高所作業のリスクも軽減できる有効な調査方法であるとされている。そこでアンカーのり面の変状箇所を検出する方法として熱赤外線映像法の適用を試みた。アンカーのり面には湧水跡が見られることが多いが、アンカーの破断を引き起こす誘因の一つは鋼線の錆であり、その錆の要因は水であるため、湧水の存在はアンカー破断の重要な要因の一つと考えられる。したがって筆者らは湧水の影響によるアンカーのり面の表面温度について一つの仮説をたて、それが熱赤外線カメラで読み取れるかどうかを確認するため、アンカーのり面のいくつかの実現場において、健全性調査を実施し、調査の際、熱赤外線カメラでアンカーのり面を撮影し、映像データの整理を行ったので報告する。 |