道路土工構造物の中でも補強土壁は,近年,凍上等に起因して補強材が過緊張状態となって破断し,壁面材の脱落事例が見られたことから,第三者被害防止を目的として,適切に維持管理を実施する必要があると筆者らは考えている.補強土壁の維持管理において,目視等を用いて異常や経時変化の把握を行う点検では,不可視箇所にある土中の補強材の状態の把握することが困難であることから,外形の変化から徴候を捉え,より詳細に部材の状態や健全性を把握する詳細調査を実施することが重要である.補強材に生じる不具合事象を把握するため,我々は既往の不具合事例からフォルトツリーを用いて整理し,変状につながる可能性のある現象である要因から,部材の機能低下である変状,部材の機能不全である損傷及び,構造物の機能不全である崩壊への一つの経路を示す劣化シナリオを設定した1).詳細調査において補強材の状態を把握する手法はこれまでにも検討されてきた2)が,筆者らは,アコースティックエミッション(以下,AE と称す)に着目し,破断や過緊張を検知する手法を検討している.本論文では,補強材におけるAE の基本的な特性を把握することを目的に,三種の補強材を対象に緊張力とAE との相関を検討した. |